大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪簡易裁判所 昭和41年(ろ)763号 判決 1966年6月07日

被告人 已浪豊

主文

被告人を免訴する。

理由

本件公訴事実は

「被告人は昭和三六年一月二四日大阪府公安委員会から空気銃一丁の所持許可証の交付を受けていたものであるが、

一  昭和三七年二月六日ごろその住所地を泉大津市南曽根一六九番地光洋紡績株式会社寮内から大阪市天王寺区空堀通二二一番地の二右会社大阪営業所内に変更し

二  同年八月一〇日ごろその住所地を右場所から大阪市生野区鶴橋南通一丁目八木某方に変更し

それぞれ前記許可証の記載事項に変更を生じたのに拘らず、それぞれの住所地を管轄する大阪府公安委員会に届出て、許可証の書換を受けなかつたものである。」

というのである。

よつて、審按するに右の事実は、被告人の当公判廷の供述、味喜政一の司法巡査に対する供述調書および押収してある銃砲所持許可証(証一号)によつて認めうるところであるが、また一方、被告人の司法警察員に対する供述調書によると、被告人は昭和三七年暮頃中井安治に対し右空気銃一丁を無償で譲渡したことが認められる。

昭和四〇年法律第四七号銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律附則五項による同法律による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法(以下法という)七条二項によると、公安委員会から法四条による許可を受けて許可証の交付を受けた者は、当該許可証の記載事項に変更を生じた場合においては、総理府令で定める手続により、すみやかにその旨を住所地を管轄する都道府県公安委員会に届け出て許可証の書換を受けなければならないと規定し、また右届出義務に違反した者に対しては、法三五条一号により一万円以下の罰金に処する旨規定しているところであるが、右の届出義務は右載事項に変更を生じたときより、次の各号の一に掲げる場合まで継続するものであり、右届出義務に違反した罪の公訴時効は右の各号の一の事由が発生した時から進行するものと解すべきである。

(一)  右届出義務の履行。

(二)  許可を受けた者が銃砲又は刀剣類を譲り渡し、その他自己の意思により所持しないこととなつた場合等法八条一項各号により法四条の許可がその効力を失う。

(三)  法一一条一、二項により公安委員会から銃砲又は刀剣類の所持の許可を取消される。

そうすると、被告人の前記届出義務違反の罪は、刑事訴訟法二五〇条五号により、被告人が右空気銃を他に譲渡し所持しないこととなつた昭和三七年暮頃から三年を経過した遅くとも同四〇年一二月末日までに完成したものというべく、同四一年二月七日になつて起訴せられた本件は、時効完成後に提起されたものであり刑事訴訟法三三七条四号に従つて免訴の言渡をすべきものである。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 巽仲男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例